· 

人工甘味料と上手につきあいましょう!~メリット・デメリットを知る~

ここ最近では健康志向(低カロリー)の高まりや、肥満・メタボ予防に対する社会的取組が続々と取り込まれることが背景となり、ゼロ・低カロリー製品が店頭に多くみられるようになりました。

また、メディアや雑誌なのでは『糖質制限ダイエット』が多く取り上げられていることから、『糖質オフ』や『糖類ゼロ』などとうたわれた食品を目にすることが多くなっています。

介護食や糖尿病食の甘味料として、医療食品分野でも使用されていることから、今後も一定の市場規模を確保していく可能性があります。

 

ですが、「余分なカロリーを摂って太りたくない!」を理由に、人工甘味料を制限なくとることは身体にとって良いことなのでしょうか?

人工甘味料のリスクに関してこれまでさまざまな議論があり、「リスクがある」とする指摘と研究もあれば「影響なし」という結果もあり、よくわからない状態でした。

 

今回は糖類の代替に使用されている人工甘味料について調べてみました!


【糖質は生命維持に必要】

そもそも、人間は食べ物から栄養(エネルギーなビタミン、ミネラルなど)を得て活動しています。

 

そのなかで人間の五感の一つである「味覚」は生命維持するために必要不可欠な感覚です。なぜなら、古来より人間は、食べることができるか、毒性があるかを味覚と臭覚に頼って選び出してきたからです。その味覚を麻痺させることは人類が積み上げてきた生存能力の退化を意味します。

 

味覚には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「旨味」があり、人間であれば誰しも備わっている機能です。その中でも「甘味」というのはエネルギー源の炭水化物を探し出すために発達した味覚です。 

甘みは一般的に「おいしい」と感じるため本能的に求めるようになります。そのため、これを我慢することは強烈なストレスとなります。「おいしい」と感じる理由は、甘いものを食べたときに、その刺激により、脳内で「β -エンドルフィン」などの快楽物質が分泌されるからです。


しかし、過剰にとると、余分なエネルギーが蓄積されて肥満になったり、高血糖持続によるインスリン分泌の増加で糖尿病を発症しやすくなります。

 

近年では、内臓脂肪の蓄積によるメタボリックシンドロームや糖尿病患者の増加により、血糖値が上昇しにくい炭水化物を選ぶ「低インスリンダイエット」や、糖質そのものの摂取量を控える「低糖質ダイエット」など、食後の血糖値やインスリン値を意識した食事が注目されつつあるわけです。


【砂糖の摂取量は減っているが、人工甘味料は増えている】

国民一人あたりの年間砂糖消費量をみると、1970年代は30㎏を超えていたのに対し、2016年では16.6㎏まで徐々に減少*1しています。

(左グラフは農林水産省データ基に作成)

しかし、人工甘味料(うち高甘味度甘味料)の需要量は2010年から2018年にかけてほぼ横ばいでした*1

 このことから、人工甘味料は相対的に増加しており、今後甘味料は純粋な砂糖から人工甘味料にシフトしつつあると推察されます。


【人工甘味料のメリット】

 

 人工甘味料にはブドウ糖が含まれないため、人工甘味料を摂取しても血糖値が上昇しません。このことから、糖尿病の予防や治療に有用であると期待できます。

 また、糖類と異なり微生物による発酵がない、つまり酸を生成しないことから、虫歯の予防に適しています(キシリトールガムなどが代表例です)。

 

 さらに、砂糖よりもはるかに低カロリーであり、砂糖よりも甘味が200600倍の甘さがあることから、摂取カロリーが削減できるので肥満の予防改善に役立ちます。


【人工甘味料のデメリット】 

デメリットとしては主に2つあります。

1つ目は「腸内環境の悪化により、血糖コントロールが上手くいかず糖尿病リスクが上がる」こと。

2つ目は「味覚異常により、糖質を過剰摂取する」こと。

 

1つ目の「腸内環境の悪化により、血糖コントロールが上手くいかず糖尿病リスクが上がる」について。

アメリカとイギリスの国民を対象とした調査によると、人工甘味料の飲料の常用は肥満に関係なく2型糖尿病の発症と関連を認めた*3という報告がありました。

また、欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で、スクラロースとアセスルファムカリウムの摂取が腸内細菌群のバランスを崩し、血糖コントロールにも影響するという研究が発表されました*4

 

『人工甘味料は摂取しても血糖値が上昇しない⇒インスリンの分泌量が減る⇒血中のグルコースが脂肪に変換されにくくなる⇒肥満の予防や改善につながる。』というメリットと矛盾していますよね。どういうことでしょうか?

 

実は、人工甘味料を過剰に摂取すると『腸内細菌叢の悪化(インスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制するインクレチンというホルモンの分泌に影響する細菌が減少)⇒耐糖能異常(注)』を招きます。

これにより、血糖コントロールが不十分でありますから糖尿病リスクが高まるというわけです。

  

 

(注)耐糖能とは血糖値を正常範囲に保つ能力のことであり、糖尿病ほどではないが血糖値が正常よりも高い状態を耐糖能異常という。

 

続いて、2つ目の「味覚異常により、糖質を過剰摂取すること」について。

人工甘味料は砂糖の200倍以上も甘味が強いことから、人間が本来備わっている五感のうちの一つ「味覚」の「甘味」を感覚が鈍磨し、どんなに甘いものを食べても足りない…結果、多く糖質を摂取してしまうということにもつながりかねません。


【まとめ】 

人工甘味料のメリットとデメリットを考えますと、糖尿病や肥満により病院で血糖値のコントロールや糖質制限の指導を受けていない限り、制限のない常用摂取は控えるべきと思います。摂取する場合は、食事全体のカロリーや栄養、味のバランスを考慮した上で活用することが必要と考えられます。


<参考・引用>

(*1)農林水産省「令和元砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し(2)

  https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/attach/pdf/satou-16.pdf (2020.1.5アクセス)

(*2) 独立行政法人 農畜産業振興機構 「平成27年度甘味料の需要実態調査の概要~人工甘味料(アスパルテーム、

       アセスルファムカリウム、スクラロース)~」

       https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001334.html (2020.1.5アクセス)

(*3) Imamura FO'Connor LYe Zet al2015)「Consumption of sugar sweetened beverages,

      artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review,

      meta-analysis, and estimation of population attributable fraction」 『the British Medical       

      Journal』 351h3576

 

(*4) DIABETOLOGIA(2018)New study reveals that low-calorie sweeteners disrupt the gut bacteria in

      healthy people in association with impaired blood sugar controlPUBLIC RELEASE: 4-OCT-2018